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コラム「デザイナーの主張」
パズドラとモンストがヒットした理由
ソーシャルゲーム業界において、すべてのゲーム会社が目の敵にしている大ヒットアプリ「パズル&ドラゴンズ」と「モンスターストライク」
5年以上前にリリースされたタイトルなのに未だにランキング上位を独占し続けているこの二つのアプリ。
どうしてこんなにも長く売り上げを維持し続けていられるのか?
ゲーム会社のアナリストたちはアレコレ分析して小難かしい仮説を立てては、自分たちのアプリもヒットさせるにはどうしたらいいのかと、色々な施策を打つものの結局どれも不発。
パズドラ、モンストの売り上げの1/10にも満たない成果に頭を悩ませている姿をよく見ます。
――でもね、僕こー思うんです。
「パズドラ」「モンスト」がヒットしたのはもっと単純な理由なんじゃないかと。
理由1早いもん勝ち
パズドラがリリースされたのは2012年。
当時はまだまだフィーチャーフォン(ガラケー)が主流で、FP向けに開発されたブラウザゲームが流行していた時代。(当時のヒット作と言えばドリランドやドラコレといったflashゲーム)
そんな中で家庭用ゲームのようにグリグリ動く本格的なゲームの登場は衝撃的でした。
パズドラ以前にもゲームらしいものはいくつか存在していましたが、国内のゲームメーカーが本気を出して開発に乗り出し、サクサク動くゲームを公に発表したのは恐らくパズドラが先駆け。
(GREEやmobageといった国内のプラットフォームを介さずにAppstoreやGooglePlayからリリースされた国産SGのパイオニアでした)
パズドラのヒットを受けて他のデベロッパでも似通ったパズルゲームが量産されましたが、そんな中でパズル以外の新しい遊びの形を提案したのが「引っ張りアクションのモンスト」
(けり姫とかありましたけどね。世界観が曖昧過ぎた) オタク産業通信様よりhttps://otakuindustry.biz/
何事も誰も手を付けていない分野に挑戦する先駆者はいつの時代も偉大なワケです。やったもん勝ちですね。
理由2プロモーションの成功
今でこそ当たり前に見かけるようになったソーシャルゲームのテレビCM。
僕が記憶している限り、アプリゲームで一番最初にテレビCMを打ったのは「パズドラ」です。
コンソールゲームのCMは当たり前でしたが、アプリのCMなんてそれまで見たことがなかった。
それだけでも十分なインパクトなのに、パズドラが上手かったのは不特定多数がテレビを見ている時間にCMを打ったことです。 朝の情報番組やゴールデンタイムの枠にCMを入れることで、普段ゲームをやらないような人たちにも宣伝を行い、新規ユーザーの獲得に一躍買ったハズです。
さらに言えば、ゲーム好きなユーザーに受けやすい ”萌え”や”オタク”といったニッチな要素をあまり感じさせないライトなプロモーションが、F層をメインとした時間帯にも難なく受け入れられたのではないかと思います。このあたりがパズドラのテレビCM成功の要因かと思われます。
最近ではSGでもTVCMを打つのが当たり前になりましたが、昨今はアニメなどのタイアップゲームも多く、テレビCMもそのアニメの放送枠にしか放映されなかったり、視聴率の低い深夜枠にCMを打つなど、あまり効果の期待できないプロモーションを行う企業が多いのでCM効果は薄いように感じます。
アニメ放送枠にCM打っても、アニメを見ている時点でその人たちは既にゲームやってて当たり前な視聴者です。CM効果が薄いと嘆いているアナリスト達を見ると「アホなの?」って思います。
モンストは二番煎じと言えますが、やはりこちらも視聴率のいい時間枠に大々的にプロモーションを行っているので、テレビ離れが加速している昨今でもまだまだTVCMによる効果は大きいといえます。 興味がなくても毎日視界に入り続ければ、嫌でも記憶に残ります。
プロモーションにお金をかけるのは重要ってことです。
理由3スマホとの親和性
スマホの性能は年々進化し、ハイスペックな端末ではPS3並みのゲームもプレイできるほど進化しています。(もっとかな?)
端末の性能が上がれば、当然ゲームでできる表現の幅も広がるわけで、開発会社はより複雑なゲームの制作に挑戦したがります。
しかし、スマホの操作は登場初期のころから変わらず、基本的にはタップとドラッグだけ。
関連記事:スマホはゲームを遊ぶ機会ぢゃない ゲームの操作が複雑になっても操作方法がそれにマッチしていなければ、難解でストレスの高いサービスでしかありません。
そういう意味で「パズドラ」「モンスト」は単純明快。 複雑な操作も必要なく、非常にスマホライクな操作感でありながら、よりゲームらしい遊びが体験できるシステムが多くのプレイヤーに受け入れられた要因だと思われます。
最近は複雑な操作が要求されるゲームも増えてきましたが、そういうゲームをプレイしているのはやっぱり”ゲーム好きな人達”
どちらかと言えば「パズドラ」「モンスト」のユーザーはゲームに精通していない人たちもユーザーとして取り込めているというのが大きいでしょう。 flashゲーム時代のただポチポチしていればいいだけのゲームに多くのユーザーが慣れていましたから、タイミング的には単純操作の方が受け入れられ易かったんだと思います。
理由4イメージ通り
最近のゲームのCMって意味わかりませんよね。
そもそもこれは何のCM?みたいのが溢れてます。
”剣と魔法のRPG”とか謳っておきながら、実際ゲームをプレイしてみると、ただひたすらキャラや装備を集めるだけの”収集ゲーム”だったり、簡単操作のライトゲームっぽく見せておきながら実は月数万単位で課金しないと全然進められない高難度ゲームだったり、表に出しているゲームのイメージと内容があまりに違うアプリが非常に多いです。
内容を素直に見せるとユーザーから敬遠されそうだから、あえて関係ない意味不明なCMにしてるのかも知れませんね。
「パズドラ」「モンスト」は表に出しているイメージと、実際のゲームシステムが上手くマッチしている好例だと思います。
特にパズルなんて世界共通語みたいなモチーフですから、だいたいイメージするものはみんな一緒。
実際ゲームをやってみても、ユーザーがイメージするものからそんなに大きく逸脱していないので、すんなりゲームに慣れていけるわけです。 RPGというゲームの文脈が苦手な人でも、ただひたすらパズルをやっていられるし、難しくなってくると収集/強化といったソシャゲの要素に上手く誘導できている。
純粋にパズルゲームという部分に徹底的にフォーカスしているから、壮大なストーリーとかもいらない。
イマイチヒットしないゲームはこの辺が下手クソなんですよね。
■プチヒットしている「オセロニア」 世界中誰でも知っているモチーフを選んだことがヒットの理由だと思います。
僕も「ソシャゲでオセロか。面白そー」と思って始めてみましたが、1~2プレイして「全然オセロじゃねぇじゃん!」と思って秒で辞めました。
イメージ戦略はうまかったのに、ゲームシステムがマッチしていない悪例ですね。
■世界中で大ヒットの「ポケモンGO」はイメージとゲームシステムがマッチした善例。 モンスターボールを投げてポケモンを捕まえる。誰でもポケモンマスターになれる。
みんながイメージするものそのまんまのゲームシステムです。
理由5普段ゲームをやらない人たちを取り込んだ
上記の条件を完璧にクリアできているのが「パズドラ」「モンスト」です。
その結果、普段ゲームをやらない人たちもユーザーとして取り込めているので、圧倒的な売り上げを維持していけるんだと思います。
国内のゲームユーザー(ゲーム好きな人)には限りがあるので市場が狭く、国産のゲームアプリはその少ない座布団の奪い合いです。
受け皿が小さいから売り上げが取れないわけで、売り上げを稼ぐには受け皿を大きくするしかありません。 関連記事:日本のソシャゲが終わる日 また、スマホは常に携帯しているものですから、ちょっとした空き時間に手軽に楽しめるのがスマホゲームのいいところ。
複雑な操作や面倒な手続きが必要なく、1プレイが3分程度で完結してしまえるから、そこまでゲームにがっつりのめりこまなくても楽しめるのもヒットの一因なのだと思います。
ガチのゲーマーは家庭用コンソールやPCのオンラインゲームの方が楽しめますからね。
たったこれだけの理由でゲームのヒットって生まれると思うんです。
バランスとか課金スキームとか継続性とか、アナリストはみんなそこにばっかり注目するけど、そーいう問題じゃないと思うんですよね。難しく考え過ぎるから迷宮に迷い込むんですよ。
「そんな単純じゃねぇよ」と思う人は多いかもしれませんが、実際にはこれらをちゃんと出来ているアプリは殆どありません。
でも、ちゃんとヒットしているゲームを見ると、この辺の条件はちゃんとクリアしてるんですよね。
「ポケモンGO」「ディズニーツムツム」「Crush of Clans」「Candy Crush」etc…
結局のところ、
スマホライクなゲームを作ろうとせずに、ゲームらしいゲームを作ろうとしているのがかえってヒットを生み出せない要因なのかなと僕は思います。
国産のSGはみんな クエスト進めて→勝てなくなったらキャラ育てて→またクエスト進めて→また勝てなくなったら→ガチャ引いて→キャラ育てて…… の繰り返しなんで、すでにどちらかのゲームを遊んでいる人にとっては目新しさなんてない、ただの側替えです。わざわざ乗り換えようとも思いません。
全く新しいゲームシステムを生み出さない限り「パズドラ」「モンスト」を超えるサービスは生み出せないでしょうね。
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