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コラム「デザイナーの主張」
日本のソシャゲが終わる日
ゲーム業界は景気に左右されないとよく言われます。
事実、バブル崩壊後下降線を辿る日本経済の中にありながら、ゲーム業界だけは業績を維持し続け、10年ほど前から始まった携帯ゲームブームのあおりを受け、家庭用ゲーム開発大手を凌ぐ新鋭のデベロッパーが沢山登場し、一大産業へと成長を遂げました。
しかし近年、その勢いに陰りが見え始めています。
2019年の半期決算ではそれまで業界を牽引し続けてきた大手デベロッパーが軒並み赤字転落。
【決算まとめ】ゲーム関連企業32社の10-12月[SocialgameInfo]
まだまだ潤沢な資金を保有しているとはいえ、この状況が続けばいずれは倒産という最悪の憂き目を迎える事になるのも可能性としては十分にあり得ます。
小さな開発会社はすでにいくつも倒産し始めていますし、大手デベロッパーに吸収される会社も数知れず。
わずか10年ほどの間で急成長を遂げ、まるで嵐が過ぎ去るかのように急速に衰退していく浮き沈みの激しいSG業界。
そこにはソーシャルゲームという独自の進化を遂げたサービスが抱えるジレンマが深く関係しています。
ガチャ課金スキームの罠
国産のソーシャルゲームのほぼ全て(といっても過言ではない)に導入されているガチャ課金システム
登場した当初は新たなビジネスモデルとして非常に注目されましたが、ありとあらゆる開発会社がこぞって真似をしてゲームを作りまくった結果、現在ではSG=ガチャ というくらいガチャ入りのサービスが横行しています。
ユーザーにとっても、もはや目新しさはなく飽きられていますが
このガチャスキームこそが日本のSGを衰退させている諸悪の根源でもあります。
ガチャ=ギャンブル
手っ取り早く金を稼げる方法ではあるものの、所詮は運試し。 ユーザーのゲームへの熟練度や戦略といったゲームの醍醐味となる根幹部分が、いくら課金したかで決まってしまうため、エンタメ性を著しく欠いてしまうのがガチャスキームの真実です。
開発会社はそれと気づかれないような仕組みを色々と考えますが、
ゲームとしての遊びの楽しさを優先すると、運次第でゲームの局面を一変させてしまうガチャスキームが足枷になり、
逆にガチャにフォーカスしすぎると排出キャラやアイテムの強さだけでゲームの局面が決まってしまうただの運ゲーになってしまうため、遊びとしてのゲームの楽しさを阻害してしまいます。 結局、ガチャを活かすための機能作りしかできないため、どこかの会社の施策の焼き直し程度のことしかできず、パズドラの側替えアプリが量産されるだけなのが日本のソシャゲの現実です。
詳しくはこちらの記事で解説しています↓
ソーシャルゲームはゲームではない
ガチャを導入することによりゲームのエンタメ性が壊れ、ガチャを活かすためのゲーム作りという本末転倒な開発が横行することになり日本のソシャゲは完全に壊れました。
ガチャから脱却しない限り日本のソシャゲはエンターテインメントとしての価値を失い、世界の市場では戦えない死にコンテンツになるのも時間の問題です。
昔取った杵柄
ガチャから脱却しようという動きはあるものの、これまでガチャスキームに頼りきりだった開発会社が、そこから一歩踏み出すというのはなかなか難しいのが現実です。
そもそもガチャを導入しないゲームの開発経験がなく、どれほど売り上げが取れるのかも数値化できないため、ガチャスキーム無しのゲームは企画の段階で弾かれるか、運よく企画が通ったとしても開発途中でガチャスキームに変更されて作り直しという憂き目に会うことが非常に多いです。
ガチャによって一時代を築いた経験からか、古い体制から抜け出せないのが今のSG業界です。
ガチャスキームでは一人当たりの課金額が高いので、ユーザーが少くてもそれなりに売り上げを維持できるのですが、サービスが長引くほど同じことの繰り返しの退屈な内容と、課金圧に耐えきれずにサービスを離れていくユーザーは増えていきます。
ユーザー数と反比例するように個人負担が増えていくのが日本のソシャゲです。
(まるで年金だな・・・)
海外のゲームは世界を市場に戦っているので、ユーザー数が日本とは比べ物になりません。
ユーザー数が多ければ一人当たりの課金額が少くても十分に売り上げを取れるのですが、ガチャが受け入れられにくい海外では日本のソシャゲはハードルが高いため、市場も国内に限られます。
一人あたり同時にプレイしているゲームは多くて3アプリほどらしいので、国内のデベロッパーはその少ない市場を奪い合っている状況で、ユーザー数の裾野が広げられない以上、稼ぎやすいガチャから抜け出せないというジレンマに陥っています。
海外デベロッパーの圧倒的なクオリティ
日本はギャンブルが一般的ではない国なので、ガチャが受け入れられ易い土壌だったのかも知れません。
しかし、ギャンブルがエンタメとして一般化している海外では、ガチャスキームは受け入れられにくいようです。
海外ゲームの課金システムでガチャを採用しているゲームは少なく、代わりにゲーム内アイテムの購入などが売上の柱になっているものが多いです。
ガチャスキームに縛られないシステムなので、遊びの方向性も自由自在。
純粋にゲームとしての楽しさを追求するように製作されているように感じますが、エンタメである以上それも当然だと思います。
残念ながら日本のSGメーカーではガチャ課金を採用している時点でゲームの楽しさよりも金儲けの方が優先されてしまうため、海外のエンタメ性の高いクオリティ重視のゲームの足元にも及びません。
ブラック体質
毎日終電、徹夜の連続、休日出勤当たり前。
一昔前のゲーム開発会社はそんな働き方が普通でしたが、最近は働き方改革の影響もあり多少緩和してきました。
それでも、リリース前などは修羅場の連続。
クリエイティブな仕事にはある程度つきものなのかもしれませんが、長くは続けられないハードな仕事です。
ゲーム開発は意外に縦割りだったりもするので理不尽な要求も多く、受け流し力が無い人は精神的にも疲れて働けなくなってしまいます。
本当に好きだから頑張れるとも言えますが、それにも限界がありますよね。
また、優秀なメンバーに重要な仕事が一極集中する傾向にあり、仕事ができる人ほど常にパンク状態なのがゲーム開発現場の現実です。
そのため優秀な人からどんどん辞めていってしまうため後続が育たず、属人化した開発では技術の継承も行られないため、担当者が辞めてしまうと開発ノウハウが失われてしまい、開発がリセットされるという・・・ 慢性的に人材不足に悩まされているのもSG業界を取り巻く不幸な現実です。
しかし、会社がいくら頑張ってルールを定めても社員自身がブラックな働き方に慣れてしまい、体に染み付いているというのも無視できない事実。
いくら定時で帰れと言われても終わらないものは終わらない。
働き方のルール以前にプロジェクトの非効率な部分を改善するなど、内部的な解決をしなければこのブラックな体質は永久に変わらないでしょう。
僕はさっさと終わらせて、さっさと帰りたい人なんで無駄な残業はしませんけど、定時後に会議入れられたり、開発〆の夜に仕様変更するとか「バカなの?」てことは日常的に起きるのでどうにもなりませんね。。。
純粋にエンタメとしてのゲームの価値を考えて、世界の市場でも十分に戦えるクオリティーの高い作品を作れなければ、日本のソーシャルゲームは本当に終わってしまうでしょう。
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