- ホーム
- 技術備忘録
- コラム「デザイナーの主張」
- UIUXデザイナーの取扱説明書
コラム「デザイナーの主張」
UIUXデザイナーの取扱説明書
ゲーム業界では特にUIUXデザイナーは希少種なので、一緒に仕事をしたことがないという人が大半かもしれません。 「プロジェクト内にUIUXデザイナーを迎えたけど、使い方が解らない」「今後迎えたいけど、何を任せればいいのか解らない」という方たちのために、「UIUXデザイナーの取扱説明書」をまとめておこうと思います。
UIUXデザイナーが出来ること
①画面設計(レイアウト)
UIUXデザイナーの専門領域です。
仕事の進め方や対応可能な範囲が人によってマチマチではありますが、基本的にはサービスのUI全般における画面設計を丸ごと任せて大丈夫です。
プランナーさんで企画仕様と一緒にワイヤーフレームまで考える方がいらっしゃいますが、UIUXデザイナーがいるならワイヤーは不要です。
ワイヤーを考えるということは画面の見た目を考えているのと一緒なので、そこはすでにデザイナーの領域です。UIUXデザイナーに丸投げしてしまいましょう。
逆にワイヤーフレームを用意されると、それに合わせなければいけなくなるので、かえって面倒です。
表現の幅やアイデアを狭めてしまうことにもなるので、ワイヤーを考えることに時間を費やすなら、企画仕様を詰めるほうに時間を費やしてもらった方が有難いです。
ああしたい、こうしたいを全部書き出してテキストベースでもいいのでUIUXデザイナーにぶん投げましょう。我々はそれで画面を作れます。
色んな人の要望やアイデアを聞いたうえで、それらを極力沢山かなえられる最適解なUIレイアウトを考えるのがUIUXデザイナーのミッションです。
②デザイン
画面の見た目を整えるのもデザイナーの仕事です。
見た目にかかわる部分はすべてデザイナーの領域と考えておけばいいでしょう。
ゲームの場合はキャラデザや背景、3Dモデルなどアーティストも沢山関わっていると思いますが、彼らの専門はあくまで【絵作り】です。
デザインは彼らの専門領域ではありませんし、デザイナーも絵が描けないので明確に差別化したほうがいいでしょう。 参考「混ぜるな危険 デザイナー≠アーティスト」
一部のUIUXデザイナーが出来ること
①実装
最近のゲーム開発エンジンの主流はunityが多いと思いますが、インターフェイスの操作だけなら使い方さえ覚えれば誰でもゲーム開発ができる便利な開発エンジンなので、デザイナーが直接実装してしまうという制作体制も割と多いです。
デザインを作った本人が一番デザインの内容を理解しているので、組み込みまでやってしまえれば効率的です。
スクリプトが絡む部分はエンジニアリングの知識が必要なので、エンジニアやTAの領域になってきます。デザイナーが対応できるのはあくまで、デザインを画面上(unity)に再現するというところまでです。
WEBならHTML/CSSまで任せられる人というイメージでしょうか。
②UIアニメ(インタラクション)の制作
UIをデザインしていると、どうしてもインタラクションまで考えなければ表現としてうまくいかない部分が出てきます。
ボタンの挙動や画面遷移のさせ方、隠されたUIの表示方法など、UIデザインをする人の大半は各パーツの動きも想像しながら画面デザインを進めているはずです。
アニメーションは2Dとは違うセンスが要求されるので、向き不向きはどうしてもありますが、単純なインタラクションくらいはUIデザイナーでも対応できるでしょう。
③イラスト制作
デザイナーは基本的に絵が描けません。
ただ、中にはグラフィッカーからデザイナーに転身した人や、私G@ckのようにお絵描きが好きで仕事にしているという人も少なからずいるので、デザイナーとアーティストは割と近しい存在ではあります。
アイコンのような情報グラフィックはデザイナー自身が制作する場合がほとんどなので、デザイナーの誰もが潜在的に絵師としてのセンスは持っているのかもしれません。
④ディレクション
ある程度経験を重ねれば、指示する立場になっていくのはどんな仕事も職種も一緒でしょう。
デザイン(アート)ディレクターの場合は、デザインのクオリティ担保に加え、プランナーやエンジニアとの折衝も自然と生まれるため、日ごろから他職域のスタッフと連携をとっているUIUXデザイナーは、存在そのものがデザインディレクターに近いのではないかと思います。
↑に列挙した業務内容はUIUXデザイナーの仕事ではないので「出来る人もいますよ」というだけの話です。
本人がやりたいと言ったらやらせてあげればいいのではないでしょうか。
UIUXデザイナーが出来ないこと
①企画
サービスの内容をどうするか?ユーザーに体験させたいことは何か?
企画の内容や体験を考えるのはあくまで企画(プランナー)の領域です。
UIUXデザイナーはプランナーがユーザーに体験させたいと考えるものを、UIでどうやって表現するのかを考えるのが仕事であり、サービスのUXを最大化させるためのUIを追求するのが任務です。
デザイナー自身が個人の要求(エゴ)をデザインに盛り込むということは基本的に無いはずなので、そういう話が出たら「そこはプランナーが考えます!」とキッパリシャットアウトしましょう。(そうしないと収拾がつかなくなる)
デザイナーの専門領域はあくまで”見た目”
「こうしたほうが面白そう」みたいなアイデアは出すと思いますが「こうしろ」とは絶対に言わないので、面白い/面白くないという話がデザイナーから出たら参考意見として聞いておくまでに留めておきましょう。
②イラスト制作
デザイナーは絵が描けません。
以下、前述の内容と同じなので結局のところ個体差です。
ただ、職域を踏み越えてまでデザイナーがやるべきことでは無いので、プロジェクト内にプロのイラストレーターがいるなら、そこはプロにお任せしましょう。
③エンジニアリング
プログラミングまでできるデザイナーは超希少種です。私はあったことがありません。
デザイナーの職域は見た目だけ。エンジニアリングは専門外です。(できる人もいるとは思います)
プロジェクト内にプロのエンジニアがいる以上、出来る人だとしても素人を混ぜるのは良くないでしょう。
デザインとエンジニアの中間を担うTAあたりならば本領を発揮してくれるはずです。
UIUXデザイナーがキレること
①問題個所だけを押し付ける
問題個所を認識していながらデザイン後回しで開発を進め、画面要件がFIXしてしまった状態で”問題個所だけ修正しろ”という、UIUXデザイナーを都合のいい事故処理係かなにかと勘違いしている人が存在します。
通常、エラーが予見できる場合は回避策をとるか、解る人に相談すると思うのですが、UIUXデザイナーに相談するというプロセスがなぜか欠落してしまう場合が多く、よく解らないのにエラーを無視して開発を進めた結果、致命的な表示エラーを引き起こしているにもかかわらず
「問題個所は後でデザイナーが何とかしてくれるだろう」という、何とも虫のいい考え方を持つ人が非常に多いです。
そういうデザインのプロをナメ腐った依頼には、UIUXデザイナーは確実にキレます。
まず、現場で詰んじゃった状態でコッチに渡されても、コッチもどうすればいいかわかりません。
大人なら実行する前に相談しましょうか。
(よくわからないのに適当にやっちゃった結果エラーが起こりました。なんとかしてテヘペロ。 ……ブン殴りますよ)
②決定事項として依頼する
プロジェクトに参加していると「こんな画面にしたい」という落書きを渡されて「これでお願いします」と依頼されることや、デザイナー不在でプランナーやエンジニアだけで勝手に進めてしまい、後出しで「こうしてください」と依頼されることが多々あります。
きちんと理にかなった設計内容であれば問題はないのですが、大抵の場合はあまりよく考えられていない、確実に不具合が発生するであろうレイアウト案だったりするので、そんな中途半端なものを渡されて”作れ”と言われても正直困ります。
確定(FIX)事項である以上、こちらはそれ以上手を加えることができません。
確定事項なのにエラーが発生していること自体が異常です。
作業指示ならエラーが解消した状態で依頼してください。
それが難しいなら画面要件を決める前に
「こういうことがしたい」「こんなアイデアがある」「こんな見た目にしたい」
けどどうしたら実現できますか?とまずはUIUXデザイナーに相談しましょう。
どんな状況になっても絶対に破綻しない画面設計を作るのがUIUXデザインです。
思いつきやノリと勢いだけで乗り切れるほどUIデザインは甘くありません。
③デザイン(設計)を勝手に変える
UIUXデザインは色んな人の「こうしたい」を全部詰め込んだ結果の最適解を探る作業なので、非常に細かいところまで考えて設計します。
なので1か所変更するだけでも必ずどこか別の場所に影響が出る微妙なバランスの上に成り立っています。
しかし、開発が進んでいくと、なぜかプランナーやエンジニアによって設計内容が勝手に書き換えられるという現象がたびたび発生します。
実行した当人は深く考えずに気軽に手を加えたつもりでも、ほんの少しの変更が大問題に波及する危険性が十分あるので、デザイナーに相談なく勝手に変更するというのはプロ意識に欠ける愚かな行為です。
他の職種なら絶対にやらないと思うのですが――
なぜかデザインだけは誰が勝手に弄ってもOKみいに思われているゲーム業界特有の体質が本当に謎です。
(非プランナーが「仕様書の内容書き換えておきました」 非エンジニアが「スクリプト書き換えておきました」 ←絶対やらないでしょ?)
UIUXデザイナーは沢山の意見やアイデアを聞き、みんなの要望を極力多くかなえるための最適解なUIは何かを考えるのが職務なので、できるだけ中立な立場であることが望ましいです。
一個人の考えに左右されると偏った印象になるので、他の人が見ると「こうじゃない」という食い違いも発生します。
UIUXデザイナーに依頼を投げる際はあくまで要望としておき、どうやって情報をまとめるかはUIUXデザイナーの判断に委ねるのが無難でしょう。
あなたが一番大切にしたいものは何かを明確にして伝えてあげてください。
関連記事
-
G@ck式「業界人の見分けかた」
-
UIUXデザイナーってなに?
-
フリーランスも辛いよ 「僕の出会ったブラッククライアント」
-
混ぜるな危険 デザイナー≠アーティスト
-
今更ながら「UIUXデザイナー不要論」にケリをつける
-
ソーシャルゲームはゲームではない
技術備忘録 でよく読まれている記事
-
デザイン
2023年版 アプリのデザインサイズどうするよ?
端末の画面サイズは年々変化し、新しい機種が発売されるたびに新たな解像度や比率の画面が登場。いまだにコレといった規格が定まっていません。いつもデザイナーを悩ませる頭の痛い問題ですね。 「スマホ 画面サイズ デザイン」とかのワードで検索すると親切に解説してくれている記事が沢山出てきますが、WEBを……
-
デザイン
アプリの画面デザインで最低限知っておかないと恥ずかしい基礎知識
ソーシャルゲーム開発ではスマホの画面デザインしかしないので ただひたすらスマホアプリの開発ばかりしていると、基本的なデザインの知識から取り残されていくなぁーと感じることが結構あります。 今一度、確認のために「アプリの画面デザインの基礎知識」をまとめておこうと思います。 基本的にはWEB……
-
スマホゲームUIの正しい作り方【デザイン編】
-
パズドラとモンストがヒットした理由
-
Unityで画像を綺麗に表示させたい