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重く切ない復讐劇「灰色の虹」

「灰色の虹」 貫井徳郎著
「小説新潮」にて2009年3月~2010年9月まで連載され、2010年10月に書籍化されたサスペンス小説。
2012年にはテレビ朝日でドラマ化もされています。

あらすじ

身に覚えのない殺人の罪を着せられ、江木雅史は仕事も恋人も家族さえも失った。
理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。彼は復讐を決意した。
強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。
あまりに悲しく予想外の結末が待つ長編ミステリー。

冤罪事件をテーマに描かれた作品で、無実の罪で投獄された主人公に待ち受ける悲惨な現実があまりに残酷で、 復讐の鬼と化した主人公に同情すら抱かせる、とても悲しい物語です。

主人公の江木雅史は犯罪とは無縁なごく平凡な人生を過ごしてきた青年。
顔に大きな痣があるため、人の顔を見て話すのが苦手で、幼少のころから人目を避けるように生きてきた彼は暴力とは無縁の気弱な青年でしたが、人生で初めて結婚を誓い合った恋人ができ、ようやく人生に希望の虹がかかり始めたそんな矢先、突如として殺人の嫌疑がかけられます。
物的証拠がほぼないにも拘わらず、担当刑事の伊佐山はハナから雅史が犯人だと決めつけ、碌な捜査も行わずに自白を迫り、生来気弱な性格の雅史は全く身に覚えのない事件であるにも拘らず「自分がやった」と自白してしまいます。

果たしてこんなことが起こりうるのか? そんな疑問が浮かびつつも、実際に狭い取調室に何時間も閉じ込められて、大柄な強面の刑事に脅されれば、気の弱い人なら嘘の自白をしてしまうのかもしれません。
もし自分の身に同じことが起こったらと考えると果たして耐えられるか? 想像しただけで空恐ろしいです。

やる気のない国選弁護人は雅史が有罪だと疑わず、警察の取り調べ方法に疑念すら抱かない冷徹な検事はにべもなく雅史の主張を退ける。
目立ちたがりで無責任な目撃者の証言は曖昧で嘘ばかり。いい加減な目撃証言をたよりに雅史に有罪判決を下す裁判長。。。
色々な不運と無責任が重なり、ついに雅史は無実の罪で殺人者として投獄されてしまいます。

そして刑期を終えて出所した雅史には、さらに過酷な現実が待ち受けていました。

人生のすべてを冤罪によって奪われ、虹色だった将来が灰色に塗り固められてしまった雅史は、冤罪を作り出した関係者たちに復讐を誓います。
そんな彼の悲壮な決意を頭ごなしに否定することができるか? もし自分の身に起こったらどうするか? どうしても考えてしまう、そんな恐ろしくも切ないサスペンスです。

とても綺麗な文章を書かれる作家さんで、日本語の使い方が巧みでテンポがよく、非常に読みやすいのも貫井作品の魅力です。
推理小説を多く手がけているので、ミステリーのトリックや伏線の使い方も抜群にうまいです。

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