読書感想文
仕事熱心な雨男「死神の精度」
伊坂幸太郎 著
2004年 日本推理作家協会短部門受賞 2006年直木三十五賞候補 2006年本屋大賞第3位
7日間の調査の後に対象者の死を見定める、クールで少しずれている死神を取り巻く6つの人生の物語。
死神 ”千葉” を主人公とした短編集。
調査部の一員として人間界に派遣され、対象の人物を1週間観察して死を見定める。
死神に「可」の認定をされた人間は8日後に不慮の事故で死亡し、「見送り」とされた人間は天寿を全うすることになる。
大抵の死神は仕事に関心が無く、ほとんどの場合は対象者を碌に観察することなく「可」にしてしまいます。しかし、主人公の千葉はキッチリと対象者を観察し判定を見定めますが、よほどのことがない限り見送りはしません・・
主人公の死神 千葉がとにかく面白い。
常に冷めた様子で対象者を見ていて、人間の価値観や言葉をあまり理解していないので人間と話すときは何時もどこかズレています。
そして強烈な雨男。彼が人間界にいるときはいつも雨。
死神なのに可愛らしく、コミカル。怖くないしどこか憎めない。
千葉という死神のキャラクターがとても魅力的です。
死神は音楽が大好きで、人間界にいる間の唯一の楽しみは音楽を聴くこと。
千葉も仕事の暇を見つけては常にCDショップの視聴機の前に張り付いて音楽を聴き続けています。
大抵の場合は他の同僚の死神と遭する。
(天使は読書好きらしく図書館に入り浸っているそうです)
細かい設定も面白い。
6人の人間の人生を見定める短編集ですが、最後の最後で6人の人生が1つに交わる構成の妙が非常に秀逸で、ラストはホッコリと胸が温かくなるそんな作品です。
僕は観ていませんが、映画化もされているようです。
死神の浮力
続編も出版されていて、こちらは一人の人間の人生に焦点を当てた長編です。
娘を残虐に殺された小説家の山野辺は苦しみのなかにいた。
著名人であるが故にマスコミからの心無い取材に晒され、さらに犯人とされていた男・本城が第一審で無罪になったのだ。
しかし、山野辺は彼が犯人であることを「知っていた」。 彼はサイコパスと呼ばれる反社会的人格者で、 自分が犯人である証拠を、山野辺宛てに送ってきていたのだった――。
控訴の猶予期間は二週間。山野辺とその妻、美樹は一時的に自由の身になった本城を探し、動き始める。そこに千葉という男が現れ「本城の居場所を知っている」と言う。
山野辺夫妻は半信半疑ながらも、この妙な男と行動を共にすることにする。
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