
読書感想文
主人公は悪魔!?異色のファンタジー「バーティミアス」
世界30か国以上でベストセラーとなった、イギリスの小説家ジョナサン・ストラウドによるファンタジー小説。日本語版では理論社から2003年から2012年にかけて出版されている。
2003年~2005年にかけて出版された3巻と2012年から刊行された外伝3巻の全6巻。
1巻500~600頁ほどあるので長編小説くらい読み応えのある作品ですが、児童向けに書かれていることもあり、解りやすい文体や表現でストレスなくすっきり読めます。
バーティミアス1巻が出版された当時は「ハリーポッター」や「ロードオブザリング」などファンタジー作品に注目が集まっていた時期でもあり、魔法や妖精、怪物や悪魔などをモチーフに扱った作品が多く出版されていました。
そんなファンタジー作品の中でも、主人公が”悪魔”という一風変わった視点から描かれているのが、バーティミアスの最大の魅力でしょう。
舞台はイギリス。魔法使いが政府機関の重要ポストとして位置づけられ、魔術を持たない一般人を支配する階級社会。
見習い魔法使いの少年ナサニエルは一流の魔法使いを目指して師匠の下で日々修業に励みますが、腐敗した権力に毒された強力な魔法使いたちとの戦いに巻き込まれていきます。
世界観はハリーポッターに近いと感じる部分も多いですが、魔法が単なる不思議な力という描かれ方ではなく、魔術師自身は特に力を持たないただの人間で、召喚によって呼び出した悪魔を使役することで力を持つという、魔法に関する知識や造形が深く描かれているのも特徴です。
呼び出された悪魔”バーティミアス”は人間ごとき下等な存在に使われるのが心底不愉快なのですが、呪文に縛られ逆らうことが出来ないため、仕方なく従いながらも常に魔法使いの命を狙っています。
それでも見習いの少年ナサニエルとの交流を通してだんだんと心を通わせていき、頼もしい味方になっていくのですが、最後まで人間を信用できないバーティミアス。
ホッコリするような場面もありながらブラックなユーモアにあふれる展開がいかにも児童文学っぽくて面白いです。
バーティミアス サマルカンドの秘宝
魔術師たちが支配する街、ロンドン。両親によって売り飛ばされた少年ナサニエルは、国家保安省の役人でもあり、政府公認の魔術師でもあるアーサー・アンダーウッドの家へ弟子入りさせられる。魔術師としての修業を積みながら、その意義と使命を教えられたナサニエルは、偉大な魔術師となって成功することを夢見る。一流の魔術師サイモン・ラブレースにひどく恥をかかされたナサニエルは、周囲の大人への反発を感じ、復讐を誓う。そして、覚えたての魔法の力で、ベテランの妖霊「ジン」バーティミアスを呼び出し、強力な「サマルカンドのアミュレット」をラブレースから盗み出す。しかし、単なる復讐だったのだが「サマルカンドのアミュレット」をどうしても必要とするサイモン・ラブレースと命がけの戦いを繰り広げることになってしまう。
バーティミアス(2) ゴーレムの眼
「サマルカンドの秘宝事件」から時がたち、ナサニエルは政府の内務省の一員として働くエリートとなっていた。ロンドンでは魔術師の支配に対する反逆の兆しとみられる事件が頻発する。「レジスタンス団」とよばれる事件の首謀者たちは一般人ながら魔法に抵抗力を持ち、政府の捜査への障害となっていた。そんな折、ロンドンの商店で大規模な破壊事件が発生し、警察官に死者が出た。レジスタンス団を犯人だとみなす政府は、無能な上司に代わってナサニエルに、レジスタンス団を探し出し、破壊活動を停止させるよう命じた。1巻でも出ていたキティことキャサリン・ジョーンズが主役として登場。
バーティミアス(3) プトレマイオスの門
ナサニエルはこれまでの功績から、一流の魔術師に出世し、閣僚の一角を占めるまでになっていた。しかし一般人の間では政府に対する不満が高まり、反乱の兆しは日に日に濃くなっていた。一方、キティは身分を偽ってロンドンに潜伏し、魔法や妖霊について学んでいた。以前に見た、バーティミアスという変わった妖霊のことを思い、人間と妖霊の敵対的な関係を終わらせることができるのではないかという希望を持つようになっていた。キティはついにバーティミアスを呼び出すことに成功し、人間と妖霊の和解の可能性について問うが、バーティミアスに否定される。
バーティミアス外伝 ソロモンの指輪(1) フェニックス編
妖霊バーティミアスが若いころの物語。若いと言っても、2000歳くらい。ソロモン王の時代に召還されたバーティミアスが、国王暗殺をもくろむ少女戦士とともに大奮闘。
バーティミアス外伝 ソロモンの指輪(2) ヤモリ編
見張りの妖霊たちによって警戒態勢が敷かれたソロモンの塔―その黒壁を巨大な“ヤモリ”がのぼっていた。それは、限りなく不可能な命令にやむなく従わされているバーティミアスの姿だった…。
バーティミアス外伝 ソロモンの指輪(3) スナネコ編
ソロモンの指輪が軍隊を放つと宣告されたその日まで、あと一日―宮殿のかたすみで一匹の“スナネコ”が目をきらめかせていた。それは、最上級の獲物をねらうバーティミアスの姿だった…。
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